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a picture of a black-and-white rose

執筆者の写真: takujiotsukatakujiotsuka

My precious oneの前身作品「花葬」は手向けの花がテーマとなっていました

その為、実際葬儀で使用する献花、供花について知る必要があると考えたのでした

葬儀花の仕事を始めると日本の葬儀の歴史に関して興味深い話を聞くことができたり

地域によっての違いや葬儀社によっても所作が大きく異なってきたりするのが分かりました

ご遺族の宗教観によっても変わってくるので複雑で奥が深い業種です


また花祭壇というもの自体、東京が主流となっていて発展していった独自の送り出し方

でした

慰霊祭などで見かける波の波形を模した何百本の菊が綺麗にカーブして

奥行きを見せているをテレビで見かけたりします

いわゆる花祭壇の真骨頂を魅せているわけですが、間近で見るとさすがに圧巻です

また使用する花も儀式の中で満開に咲くよう計算されて花を挿していきます

種類と大きさも揃えて大量の菊を用意するのはかなり大変です

そして水揚げするのも至難の技なのがよくわかります

トレーラーで運ばれてきた菊の水揚げをその日に全て処理した時は大変でした

菊は和物と呼ばれ水に浸かる部分は手で折ることになっています

洋物は逆にハサミで切らなければなりません

瞬発力と握力を使い一気に折るのですが、数が多いと握力がなくなってきて大変です

だいたい根元3cmくらい手折りした菊を、次の工程では水に浸かる部分の葉を

手で削いでいきます

10束くらい纏めて削ぐのですが軍手がないと手に色がついてなかなか落ちません

また輸入物は薬品が強く顔に葉が当たると被れてしまったりします

トレーラーで運ばれてきた分量ですから、手折りから葉を削ぐ工程を如何に早く出来るかが

勝負になってきます

処理が終わった菊の束をさらにまとめて水の入った桶に漬けてひと段落します

そこから冷蔵庫に保管するのですが、気をつけないと運ぶ時腰を痛めてしまいます

冬なのに皆汗をかきながら水揚げをしていました


葬儀では若い人が亡くなった場合や女性には洋花が好まれていました

季節によって祭壇に挿す花は違ってきますし、性別で使用する色も変えていきます

また遺族の好みによって花を染めたりもします

自然界に咲く花で青い花は種類が少なく、葬儀で使う青い花は染めものが多くなります

しかし宗教上の都合で染めた青花は使えない場合もあったりしました

数年前、サントリーで青いバラが開発され匂いも素晴らしいと噂で聞きました

値段はまだ高いらしいので残念ながら現場で見たことはありません

バラの祭壇は老若男女問わず遺族には好まれていました

新鮮なバラよりは開花して時間の経ったバラの方が色が濃くムードがあって私は好みでした

そういったバラを使い、儚い感じを演出するのが上手な花屋さんがいらっしゃいました


今の時期、外を散策すると梅が開花して目を楽しませてくれています

四字熟語で暗香疎影という言葉があります

真っ暗な中でわずかに漂う梅の香りのことを言います

「暗香」はどこからか漂う良い香りのことで、梅の花の香りを言うことが多いそうです

日本画で黒い背景に白い梅が描かれて絵があったりしますが

香りを感じるために描かれてるということです

また暗香浮動という四字熟語もあります

「浮動」は浮き漂うことと春の訪れを言い表す言葉で、今の季節にピッタリです


My precious oneの中で私もモノクロのバラの写真を使用することにしました




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Takuji Otsuka|アート、写真家、コンセプチュアルアート、20世紀写真

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